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タイトル 相続について(5)

 

 遺言で、全財産を相続人の一人が取得する旨をその内容とされている場合、他の相続人は相続財産を一切取得することが出来ないのでしょうか。

そのようなときのために、相続人には遺留分があります(ただし、兄弟姉妹には遺留分はありません)
 たとえ、上記のように全財産を相続人の一人が取得するといった内容の遺言があっても、他の相続人が遺留分の主張をすればその限度で財産を取得することができます。
遺留分は子供の相続の場合、(法定相続分)×(2分の1)です。遺留分を侵害するような内容の遺言であっても無効というわけではありません。遺留分を侵害された相続人の主張があって初めて遺留分相当の相続財産を取得できる、ということです。

 ですから、遺留分はこれを放棄することが出来ます。したがって、もし遺留分を相続人が主張しないのであれば、全財産を相続人の一人に相続させるという遺言が実現することになります。
 遺留分の主張を出来る期間は、相続開始及び、遺留分の侵害を知ってから1年、または、相続開始から10年です。

 また、民法903条は、婚姻、養子縁組または、生計の資本として贈与をうけたときや、遺贈を受けた額を相続人が受ける相続分から控除する規定を置いています。
 たとえば、兄だけが特別に大学に進学してその学費の援助を受けていた、といった事実があれば相続分を控除する事由となります。
 逆に、民法904条の2の規定は、「寄与分」といって、相続分増加に関する規定を置いています。相続人のなかで、亡くなった方の事業の労務の提供または財産上の給付、療養看護等により相続財産の維持増加につき「特別の寄与」をした相続人に対して、相続分を増加する規定です。
「通常の寄与」については、考慮しない点に注意が必要です。つまり、通常の看護であれば、相続分の増加を主張できないですし、相続人の配偶者(=相続人でない者)が特別の看護をしても相続分の増加を主張することが出来ません。この増加する相続分については、第一に協議で決定し、次に、協議が調わないときは裁判所により決定します。