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タイトル 相続について(3)

 

 前回に引き続き、相続についてお話します。
 人が亡くなると、相続が発生します。これにより、相続人に本人でしか権利行使できないような特殊な権利を除いて、相続人に全てが継承されます。また、義務についても同様です。
 特に注意しておかなければならないのは、相続される財産の中には負債も含まれるという点です。
負債も「マイナスの財産」として相続の対象となり、相続人が引き継がないといけません。
債務が多大なので債務はおいて、プラスの財産のみを引き継ぐ、という「おいしいとこ取り」は出来ません。もし、亡くなられた方が債務超過であることが明らかなのであれば、家庭裁判所において相続放棄の手続きをすることをおすすめします(相続放棄をするには、亡くなったことを知ってから3カ月以内にする必要があります)



 

また、前回お話ししたとおり、必ずしも法律で決められた相続分で相続をしないといけないわけではありません。この相続分を相続人間で決めるのが遺産分割協議です。
 遺産分割協議によって相続分を決定するにあたり、民法第906条では「遺産の分割は、遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」としています。
 たとえば、全く親の介護をしなかった相続人であっても、その人に全財産を取得させる遺産分割協議を成立させることも可能です。
 また、不動産を長男に取得させ、その代わりに他の相続人に対して長男自身の財産から100万円ずつ支払う、などといった内容の遺産分割協議を成立させることも可能です。
 上記のように、全財産をある相続人に取得させる遺産分割協議が成立したとしても、判例上、債権者は各法定相続人に対して(例え全くプラスの財産を取得していなかったとしても)前回記述の通りの法律上の法定相続分の割合で請求することができることになっています。もし、法定相続分と異なる割合で負債を負担するのであれば、債権者を含めた合意をしないといけません。
遺産分割協議で財産を全く受け取っていないのだから支払う義務はない、という理屈は通らないことになります。